今日、赤ワインを飲もうかな、と思った時、どのようにワインを決めますか?
今日食べるお料理に合うか、あるいは自分の好みの味わいであるかを考えますよね。この時重要になるのは、どのくらいぶどう品種を知っているかということ。ぶどう品種を多く知っていればいるほど、ワインを選ぶ選択肢も多くなっていきます。
そこで今回は赤ワイン用のぶどう品種について詳しく解説していきます。
赤ワインに使われるぶどうとは?
赤ワインに使われるぶどうを「黒ぶどう」といいます。ぶどうの果皮が黒っぽい紫色のぶどうです。
黒ぶどうは果皮が黒っぽいから「黒ぶどう」と呼ばれているのですが、赤ワインを造るためにはこの色である必要があります。
見た目も美しく、美味しい赤ワインを造るために、「醸し」を行ってあの深い色合いと渋味成分を得ているところが重要なポイントです。黒ぶどうからでなければ、赤ワインは造れないのです。
ここからは黒ぶどう品種をご紹介いたします。日本のワインショップで入手できるものを中心に、以下18品種を解説していきます。
これだけは覚えたい!重要品種トップ5
女王の気品! カベルネ・ソーヴィニヨン
世界でもっとも栽培されている、代表的な黒ぶどう。環境適応能力があるぶどうなので、栽培地域が世界中に広まりました。フランスのボルドー地方原産。
外観は濃い色調。黒っぽいベリー系の香りに加え、熟成が進むにつれてスパイス香、シガーなどのニュアンスを感じるようになります。また、木樽由来のバニラやコーヒーのような香りもあり、とても華やか。渋味も酸味もしっかりした、長期熟成に耐える品種です。
その華やかでエレガントな味わいから、黒ぶどうの女王に例えられる品種です。
覚えておきたい!有名なカベルネ・ソーヴィニヨンのワイン
シャトー・ラフィット・ロートシルト
シャトー・ラフィット・ロートシルトは、ボルドー地方ポイヤック村のワインで、いわゆる「5大シャトー」のトップに君臨しています。カベルネ・ソーヴィニヨンを主
体として造られており、長期熟成後に感じる素晴らしい芳香やシルキーな舌触りは、まさにエレガンスの極致。本品は100年以上の熟成を経た、貴重なヴィンテージ物です。
ふくよかな柔らかさが魅力 メルロー
カベルネ・ソーヴィニヨンに次ぐ栽培面積を誇る、赤ワイン品種の代表的なぶどう。フランス・ボルドー地方が原産です。
ブラックベリー系の果実の凝縮感に、少し土っぽいニュアンスがあるのがメルローの特徴。カベルネ・ソーヴィニヨンと比べると渋味や酸味は少なく、タンニンは滑らか。ふくよかで柔らかい印象です。
ボルドー以外の産地に、アメリカのカリフォルニア州、チリ、オーストラリア、日本など。
【覚えておきたい!有名なメルローのワイン】
シャトー・ペトリュス
シャトー・ペトリュスはボルドー地方ポムロール地区の超高級ワイン。ポムロールはボルドーでもメルローの栽培が盛んな地域で、戦後に脚光を浴びて値が高騰した「シンデレラワイン」が多く造られています。ペトリュスのトロリと濃厚な味わいとビロードのような舌触りは、政財界の要人にもファンが多いと言われています。
王者の風格! ピノ・ノワール
世界一高額なワインを造るぶどうであり、もっとも熱狂的ファンが多いピノ・ノワール。栽培する場所を選び、育てるのが難しいので、栽培面積自体はそれほど多くはありません。ワインの王と讃えられる、ブルゴーニュの赤ワインを生み出す品種です。
透明感のあるルビーのような明るい色調です。ラズベリーやストロベリーなどの赤いベリー系果実、バラの花束、トリュフやマッシュルームなどさまざまな香りが時間の経過とともに現れ、飲む人を飽きさせません。タンニンはそれほど強くなく、酸味が豊か。口中に静かに広がっていくその香りと風味は、とても官能的です。
【覚えておきたい!有名なピノ・ノワールのワイン】
ロマネ・コンティ
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ(DRC)が手掛ける、世界でもっとも高額なワイン。コンティ公がこの畑を巡ってポンパドゥール夫人と争い、ついに勝ち得た話はつとに有名です。もはや芸術品とも呼ぶべきロマネ・コンティの、DRCの技術を結集して造られる深い味わいは、他を寄せ付けない王者の貫録。一生に一度は飲んでみたいワインです。
ジビエや肉料理のよき相棒 シラー
原産はフランス、コート・デュ・ローヌ地方。人気急上昇している品種です。お肉料理と相性のいい品種なので、昨今のジビエブームで、まだまだ日本でも人気が出そうです。
ボルドー品種のワインと比べると、色調は少し青みがかって見えます。カシスやブラックチェリーのような黒い果実、そして最大の特徴である胡椒の香り。オーストラリアのシラーズにはビター・チョコレートのニュアンスが強く残ります。渋味も酸味も豊か。加えて鉄分を感じさせるフレーバーがあるため、少しレアな部分が残るロースト肉との相性は抜群です。
【覚えておきたい!有名なシラーのワイン】
ギガル・コート・ロティ・ラ・ランドンヌ
コート・ロティはコート・デュ・ローヌ地方の北部に位置する地域。フランス語で「焼けた斜面」という意味を持ち、その名のとおり南向きの急斜面に植えられたぶどう畑は、夏場は太陽の強い光に焼かれます。ランドンヌはヴィオニエをブレンドせずにシラーのみで造られるため、ギガルが擁するコート・ロティの中でも別格の力強さ。重厚でタンニンの強いワインが好きな人にぜひ味わってほしい1本です。
ボージョレ・ヌーヴォーでお馴染み ガメイ
原産はフランスのボージョレ地区。ピノ・ノワールが他の品種と自然交配してできたぶどうと言われています。毎年11月第3木曜日に解禁される、ボージョレ・ヌーヴォーの原料となるぶどうとして有名。
ラズベリー、ストロベリー、チェリーなど赤い果実の瑞々しさが特徴。特に、ヌーヴォーは醗酵を終えたばかりの新酒なので、熟成ワインでは感じることのできない発酵由来の香りが残っています。バナナやフルーツキャンディのような香りです。
赤ワインとしては軽く、フレッシュ&フルーティー。ピュアな果実の味わいを楽しめます。タンニンの渋味も控えめ。
【覚えておきたい!熟成タイプのガメイのワイン】
マルセル・ラピエール・モルゴン・キュヴェ・MMXV
クリュ・デュ・ボージョレと言われる熟成タイプのワインの中でも、特に良年にしか造られないワインです。マルセル・ラピエールは、フランスの「自然派ワインの父」と呼ばれた人物。2010年に他界し、現在は息子のマチューがドメーヌを切り盛りしています。赤いベリー系のピュアな果実味が凝縮され、品質のよいぶどうのうまさを感じる1本です。
その他のフランスの品種
カベルネ・ソーヴィニヨンの親 カベルネ・フラン
カベルネ・ソーヴィニヨンの親にあたる品種ですが、カベルネ・フランの方が穏やかな味わいです。赤いベリーやブルーベリーの果実味、バランスの取れた酸味と渋味。冷涼な地域でぶどうが未熟なまま摘んだ場合に、ピーマンのような青い香りを感じることがあります。
ボルドーの超一流シャトー、シュヴァル・ブランでは、カベルネ・フランのブレンド比率を高くすることで、エレガントな高級ワインを造っています。またロワールでは、シノン、ブルグイユなど、カベルネ・フラン単体の素晴らしいワインが造られています。
「黒ワイン」と呼ばれる濃い色合い マルベック
原産地はフランスの南西地方。この土地のマルベックから造られるワインは、「黒ワイン」と呼ばれるほど色調の濃いもの。ボディのしっかりした渋味の強いワインになります。
ブラックベリーやブラックチェリー、カシスなどの黒い果実味、しっかりしたタンニンを感じられます。
ブレンドの強い味方 ムールヴェードル
スペインが原産。フランスのコート・デュ・ローヌ地方南部、プロヴァンス地方、スペインのバレンシア地方で栽培される品種。
濃い色調で力強く、ボリューム感があり、タンニンのしっかりした濃縮感のあるワインを造ります。渋味の強い品種のため、ブレンドされることが多いですが、長期熟成が可能なため、ムールヴェードル単体で造られているものもあります。
ソフトな口当たり グルナッシュ
スペインのアラゴンが原産のぶどうで、スペインではガルナッチャ・ティンタと呼ばれます。フランスではコート・デュ・ローヌ地方、プロヴァンス地方、ラングドック・ルーション地方など、南仏が栽培地。
ブラックベリーの凝縮した果実味に加え、ドライプラム、きのこ、白胡椒などのニュアンスを感じます。酸味は豊かですが、味わいは全体的に親しみやすく、渋味も穏やか。チャーミングなワインに仕上がります。産地は他にアメリカやオーストラリアなど。
ワインに強さを与えるブレンド要員 カリニャン
原産はスペインのアラゴン。フランスではコート・デュ・ローヌ地方南部、プロヴァンス地方、ラングドック・ルーション地方など、南仏で栽培されています。
色調が濃く、黒っぽい果実の凝縮した味わい。単独で醸造しての長期熟成も可能ですが、酸味も渋味も強いため、どちらかというとほかの品種とブレンドしてワインに強いボディを与える方が得意。他に、アメリカでも栽培されています。
イタリアの品種
中部イタリアの華 サンジョヴェーゼ
イタリアのトスカーナ州原産。イタリアの広い地域で栽培されています。キャンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノの原料ぶどうとしても有名。軽めのテーブルワインからフルボディの長期熟成タイプまで、さまざまな味わいを持つワインが造られます。
軽めのものはフレッシュ&フルーティーなワインです。一方、高級路線のものは、木樽での熟成を経たものが多く、腐葉土、なめし革、乾燥したハーブ、スパイスなどの複雑なニュアンスを感じる風格のあるワインとなります。
北部イタリアの雄 ネッビオーロ
イタリア、ピエモンテ州原産のネッビオーロは、バローロ、バルバレスコの原料になることで有名なぶどう品種です。
色調は明るく、この品種に特有の鮮やかな赤。酸味、渋味とも非常にしっかりしており、特に若いワインのタンニンは刺激が強いです。基本的には長期熟成を経ることで味わいのバランスが取れ、魅力が出てくるタイプ。
果実味を楽しむ バルベーラ
イタリア、ピエモンテ州原産。酸味は豊かですが渋味は穏やかで、チャーミングなワインを造ります。
ピエモンテのものは、黒いベリー系、カシス、プラムなどの果実に瑞々しさを感じますが、アメリカのものはジャムやドライプラムなど、加熱した果実を感じます。
バランスのいい味わい モンテプルチアーノ
イタリア国内で広く栽培されていますが、主要産地はアブルッツォ州。「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」というワインを飲んだことがある人も多いのではないでしょうか。
しっかりと濃い色調ながら、渋味は見かけほど強くなく、果実味豊かなバランスのいい味わい。合わせるお料理の幅も広く、人懐っこい大らかさを感じます。
長期熟成を経て逸品に アリアニコ
イタリア南部で多く栽培されている品種ですが、ルーツはギリシャであると言われています。
酸味、渋味とも非常に強いため、ワインを飲むまでには長期熟成が必要。熟成したアリアニコは、果実味の他、なめし革や乾燥肉、スパイス香、タバコ、コーヒーなどの複雑なニュアンスが備わった逸品になります。
スペインの品種
スペインといえばこれ! テンプラニーリョ
スペイン北部が原産で、スペインの代表的な黒ぶどう品種です。評価の高いリオハを中心に、スペイン各地で栽培されており、ミディアムボディからフルボディまでさまざまなタイプのワインが生産されています。
産地によって、レッドベリー、ブルーベリー、ブラックベリーなど、異なる果実味を感じ、そこになめし革、タバコ、乾燥したハーブのニュアンスが加わります。木樽熟成しているものは、バニラやコーヒーなどの香りも出てリッチ。
ドイツの品種
寒い地域で大活躍! ドルンフェルダー
ドイツで造られた交配品種。そもそもは色調の濃い赤ワインを造るための交配品種だったのですが、環境適応能力に優れ、病害にも強かったため、ぶどうの栽培地としては寒いドイツにとって、安定収量を見込める大切な品種になりました。
色調は濃いですが、口当たりはとても柔らかく、フルーティーです。北海道など、日本のワイン産地でも盛んに生産されています。
アメリカの品種
アメリカの代表選手 ジンファンデル
アメリカのメジャーな黒ぶどう品種。イタリアではプリミティーヴォと呼ばれ、原産はクロアチアです。ぶどうの糖分が高いため、アルコール度数が高いボリュームのあるワインを生み出します。ブラックベリー、カシスなどの凝縮した果実味に胡椒などのスパイス香、しっかりとしたタンニン。また、「ホワイト・ジンファンデル」というロゼワインも有名です。
日本の品種
日本期待の星 マスカット・ベーリーA
日本人が日本の風土に適したぶどうを造るために交配して生まれた品種。2013年にはO.I.V.(国際ぶどう・ぶどう酒機構)に品種登録され、国際的にも知られるぶどうになりました。
色調は明るく、いちご、フルーツキャンディのような甘い香り。溌剌とした酸味があり、まさにフレッシュ&フルーティーです。
赤ワインのぶどう品種 まとめ
黒ぶどう品種にもいろいろなルーツや味わいがあること、分かっていただけましたでしょうか。
現在、世界で栽培されているぶどうは約1000種とも言われ、このうち、実際にワイン用の品種として栽培されているものは100種に及ぶと言われています。機会があればぜひ飲んだことのない品種にも挑戦してみてくださいね。
白ワインのぶどう品種も知りたい方はこちらをどうぞ。
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