燗酒とは?燗酒の作り方から、熱燗におすすめの日本酒をご紹介!

2020/11/08
日本酒

「熱燗、ぬる燗、飛び切り燗って何が違うの?」

「熱燗の作り方が知りたい」

「燗酒にはどんな日本酒がいいの?」

燗酒について、このような疑問をお持ちの方も多いのでは?

今回は、燗酒の温度ごとの種類から、燗酒の作り方、燗酒に合うおすすめの日本酒をご紹介します。

記事の執筆者

町田 英伸

利酒師、焼酎利酒師

26年間の飲食業従事中に日本酒&焼酎居酒屋を2店舗経営。 現在はフリーライターとして飲食店経営やお酒にまつわる情報を発信中。

燗酒とは

燗酒とは、端的に言えば「温めたお酒」のことを指します。

酒自体を温める行為を「燗をつける」と呼び、これが「燗酒」の由来です。

日本では酒を燗につける行為というのは、古くから行われてきた飲用方法です。

 

味わいの変化

日本酒を燗につけると、香りが立ち上り、酸味が和らいで甘味(旨味)が強く感じられます。

さらに苦味と辛味が弱まりますので、全体的に味わいが丸く膨らんで感じられるようになります。

冷えている状態では一本調子で特徴のないお酒も、温めることによりその個性が花開く場合もあるほどです。

 

燗酒の温度と種類

燗酒とひとことで言っても、実は温度によってその呼び方はさまざまに変化します。

ごく一般的に燗酒の代名詞のように耳にする、「熱燗」というのは、この燗酒の温度帯による1カテゴリーに過ぎません。

 

燗酒の温度帯ごとの呼び名

各温度帯別の呼び名の違いは次のとおりとなっています。

呼び名温度
日向燗(ひなたかん)約30℃
人肌燗(ひとはだかん)約35℃
ぬる燗(ぬるかん)約40℃
上燗(じょうかん)約45℃
熱燗(あつかん)約50℃
飛び切り燗(とびきりかん)約55℃

これらすべてを合わせて、総称で「燗酒」と呼びます。

 

日向燗

日向燗は常温よりは少し高い程度の温度です。

まさに日向にお酒を置いておいた程度の温度帯となり、香りや味わいが少しずつ花開いた状態になります。

 

人肌燗、ぬる燗

人肌燗、ぬる燗ぐらいが、もっとも日本酒が持つふくよかな味わいが広がり、甘味が強く感じられます。

 

上燗、熱燗

上燗から上になると逆にアルコールの香りが強く感じられ、丸みよりも引き締まった辛味と香りが強くなります。

 

飛び切り燗

飛び切り燗から上になると、お酒の甘味よりは辛味のほうが強く感じられるようになるため、よりシャープさが増します。

 

美味しい燗酒の作り方

ここでは、ご家庭でも簡単にできる3つの方法をご紹介します。

 

直火燗

鍋などに直接お酒を入れて、そのまま火にかける方法です。

大量のお酒を一度に温めることができます。

一方で、鍋越しにダイレクトにお酒が火で温められるため、アルコールが揮発しやすく、香りがキツく辛味が強くなりやすいのが難点。

焦げ臭がつかないよう、弱火でじっくり温めるのがコツです。

 

電子レンジ燗

徳利などにお酒を入れ、電子レンジで燗をつけるのは、ご家庭でもっとも気軽に燗をつけられる方法です。

電子レンジで燗をつける際は、次の点に注意しましょう。

 

注意点
・香りが飛ばないよう徳利にはラップでフタをする
・徳利の上部・下部で温度差が出ないよう、途中で一度取り出し、割り箸などをひと刺しして中身を混ぜる
・1合あたり500Wレンジで約40秒を目安に、様子を見て少しずつかける
・急激な温度変化で香りを飛ばさないよう、解凍モードを使うのもおすすめ

 

湯煎燗

少々手間ではありますが、もっとも理想的に燗酒を作る方法です。

手順と注意点は次のように行ってください。

 

①徳利の口の一番すぼまった部分までお酒を入れる

 

②鍋(またはヤカンなど)に徳利が半分以上浸かる量の水を入れる

鍋の湯を沸かし80℃ぐらいにする(鍋底全体に泡が出てすぐに弾ける程度)

※完全に沸騰させないようにしてください。

 

③火をごく弱火に落とし(保温状態)、80℃にキープしたまま徳利を湯の中に立てる

 

④徳利の中の酒が温まってくると、水位がだんだん上ってくるので、好みのところで止める。

 

④注ぎ口が小さい徳利の場合は半分くらい上がればぬる燗、上部まで上がれば熱燗が目安。

※徳利のデザインにより変化します。

燗酒の道具

料理用の温度計を徳利に直接(直火燗なら鍋に)差し込んで、お酒の温度を計ると失敗がありません。

温度別に燗の種類が書かれた酒燗計という商品も販売されています。

 

 

燗酒のアレンジ

単に日本酒をそのまま燗につけるだけでなく、ちょっとしたアレンジを加えた燗酒のバリエーションがあります。

 

ヒレ酒

ふぐのヒレを乾燥させたものを、直火(炭火がベスト)で真っ黒になるまでしっかりと焼きます。

沸騰寸前まで温めたお酒に、塩をひとつまみ入れたものを湯呑などの器に注ぎ、その中に焼いたヒレを落とし込みます。

使う日本酒は、辛口の本醸造、普通酒がおすすめです。

一旦フタをして1分ほど蒸らすと、ヒレの焼色がお酒を琥珀色に染めて飲み頃になります。

器に注いだお酒にライターなどで火をつけて、アルコールを飛ばして飲むのもおすすめ。

まるで滋養スープのような味わい深い美味しさが広がるお酒です。

 

骨酒

「こつざけ」もしくは「こつしゅ」と呼ばれる燗酒のバリエーションです。

カリカリに焼き焦がした魚を熱々の燗酒に浸して、焼き魚の香りと旨味を酒に閉じ込める飲み方です。

主に淡白な淡水性の魚である、イワナやヤマメ、鮎などを利用することが多いものの、鯛酒などもおすすめ。

骨酒の魚には決まりがなく、ヒレ酒も広義の意味では骨酒の1種となります。

 

燗酒に合う日本酒の選び方

燗酒に合う日本酒は、温度帯別に2つに分けて考えることができます。

 

人肌燗、ぬる燗に向いた日本酒

燗の中でも比較的ぬるめの燗は、もっとも味わいがふくらみ、甘味が強く感じられます。

この温度帯で楽しむのに向いたお酒は、純米酒熟成酒など、旨味が強く酸度もある程度高めな日本酒です。

特に「山廃(やまはい)」や「生酛(きもと)」という表記があるものは、いわゆる濃醇旨口のタイプが多く、ぬる燗にはピッタリ。

冷やだと酸味が強く少々クセの強い味わいが、温めることによりふくよかで奥深い香りと味わいへと変化します。

 

上燗、熱燗に向いた日本酒

上燗や熱燗など、熱めの燗酒ではふくよかな甘みの強い味わいというよりは、シャープな辛味のほうが引き立ってきます。

そのため選ぶお酒も濃醇旨口タイプよりは、いわゆる淡麗辛口タイプの日本酒が嫌味がなく楽しめるでしょう。

本醸造酒、普通酒で、日本酒度が高め・酸度が低めの日本酒を選ぶのが、熱めの燗を楽しむにはおすすめです。

 

燗酒に向かない日本酒

日本酒のタイプによってはあまり燗酒に向かないタイプのお酒というものも存在しています。

それは、主に次の2タイプです。

 

吟醸酒タイプ

華やかな香りが特徴の吟醸酒は、冷やした時にその香りがもっとも引き立ちます。

このタイプの日本酒に特徴的な、花やフルーツのような香りは、温めると飛んでしまいますので、注意しましょう。

なお、吟醸酒と表記された中にもほんの少し温めると香りが立っておいしいお酒も少なからずあります。

その場合もぬる燗程度までの温度で楽しむのがおすすめです。

 

生酒タイプ

生酒とは、できたての荒々しい風味や新鮮さを味わうために、保存性を犠牲にしても、あえて火入れをせずに出荷しているお酒です。

そのため、飲用時に火入れをしてしまってはせっかくの「生」が台無しになってしまいます。

生酒の個性を存分に楽しむためには、冷やして飲むのをおすすめします。

 

燗酒におすすめの日本酒10選

ぬるめの燗におすすめの日本酒

大七 生酛純米

大七 だいしち 純米 生もと 1800ml

生酛といえば大七と呼ばれるほど、生酛造りでは有名な銘柄です。

濃いめの味わいの煮物などと合わせ、ぬるめの燗でじっくりと楽しむのがおすすめです。

ただ、熱燗まで楽しめる懐の深さが一番の魅力ともいえます。

 

黒牛 純米酒

名手酒造 黒牛

お米の風味や独特の酸味がバランスよく調和して、クセがなく初心者向けの燗酒におすすめです。

冷やや常温よりもぬるめの燗につけることにより、その風味がぐんと増します。

燗酒の楽しさを体験するにはもってこいの1本といえます。

 

醸し人九平次 火と月の間に 純米吟醸山田錦

醸し人九平次

「燗」という字をほどいた「月」と「火」の「間」で酒を醸したという、ロマンチックな名を冠した日本酒。

ぬる燗にすると香りを味わいがぐっと引き立つ、まさに燗をするために生み出されたお酒です。

チーズを使ったパスタなどにも合わせられる懐深い味わいです。

 

駿 純米酒

駿 純米酒

全量山田錦で作られた純米酒です。

山田錦の特徴であるまろやかさとキレの良さを存分に引き出しています。

人肌燗ぐらいのごくぬるめの燗がおすすめです。

ポン酢で食べるさっぱりとした料理と合わせると、その旨味をあます所無く楽しめます。

全国燗酒コンテスト2020では「お値打ちぬる燗部門」で最高金賞を受賞しています。

 

一ノ蔵 特別純米 超辛口

一ノ蔵 特別純米酒

超辛口というタイプには珍しく、蔵元ではぬるめの燗を推奨しています。

全国燗酒コンテスト2020の「お値打ちぬる燗部門」で金賞を受賞。

控えめな香りと、ビシッとキレの良い辛口な味わいで、食中酒として楽しむにはもってこいな1本となっています。

 

熱燗におすすめの日本酒

神亀 純米酒 辛口

神亀酒造 神亀【しんかめ】

旨味が凝縮され、お米由来のふんわりとした香りが特徴です。

少し強めに温めてもくずれない酒質のバランスは秀逸。

キリッとした辛口の旨味が魅力で、淡白なお刺身から、味の濃い煮物まで、これ1本で楽しむことができます。

 

酔鯨 特別純米酒

酔鯨酒造 特別純米

高知県が誇る有名銘柄・酔鯨の純米酒です。

控えめな香りながら、キレの良い後口と程よい旨味が特徴で、上燗~熱燗程度の燗でもっとも魅力を発揮します。

少しクセの強い料理まで受け止めてくれる、食中酒としては申し分ない味わいです。

 

八海山 特別本醸造

米の甘みと香りを存分に楽しみながら、飽きの来ないキレのある味わいが特徴。

ちょうどいい塩梅のアル添具合で、適度なアルコールの刺激が楽しめる昔ながらの熱燗です。

醤油や味噌味の鍋物との相性は抜群です。

熱燗から上燗まで熱めの燗でコップ酒、なんて飲み方もおすすめします。

 

久保田 百寿

久保田 特別本醸造 百寿

言わずとしれた久保田の一番のスタンダード品で、特定名称は本醸造酒となります。

そのクセのない味わいは冷やから燗まで、あらゆる楽しみ方ができます。

特にお刺身などを食べながら熱めの燗を飲むのは、堪えられない喜びです。

最近は手に入りやすくなったことも手伝い、コスパにすぐれた1本といえます。

 

蓬莱 蔵元の隠し酒

蔵人全員が杜氏の技量を持つ酒造り職人集団が、地元・飛騨の水と米を使い、古式酒造法と最新の吟醸造りを合わせて仕込んだ、こだわりの1本です。

全国燗酒コンテスト2020では、「お値打ち熱燗部門」で金賞を受賞。

辛口ながらお米の甘味と酸味がしっかり感じられる、芯のある味わいで熱燗にも良く合います。

 

さいごに

日本酒好きにとって燗酒は、季節が秋から冬に変わり、空気が冷たくなると恋しくなってくる飲み物です。

冬の醍醐味・鍋料理はもちろん、お刺身から煮物や焼き物など、和食系のつまみや食事に合わせた、食中酒としては非常にすぐれた飲み物です。

日本酒の種類ごとに個性と良さを引き出す飲用温度帯は違いますが、温度によって見せる顔がぜんぜん変わってくるのも燗酒の楽しみ方の1つ。

この記事で紹介したような内容を参考に、ぜひご自宅でも燗をつけて楽しんでみてください。

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